翻訳コラムを見てくださっている皆さまこんにちは。(株)高橋翻訳事務所の高橋です。
新年度になりました。古くからのお客様だと1990年代初頭からの方もいらっしゃいまして、中には会社を移ってからもご依頼いただくこともあり、ありがたい限りです。
そんな中、カタカナ言葉の移り変わりを感じることもよくあります。このところ、海外からの観光客が非常に増加していますが、「インバウンド(inbound)」という言葉をよく目にします。私が最初にこのカタカナ言葉を目にしたのは1990年代で、まだネットもそれほど一般的ではなく、テレマーケティングが発達していた時期に「インバウンドコール(inbound call)」、反対語としては「アウトバウンドコール(outbound call)」、という言葉がよく使われていました。「インバウンドコール」とは、「既存のお客様や、商品やサービスに興味を持ったお客様(見込み客)からの電話での問い合わせ」というときに使い、「アウトバウンドコール」というのは、「営業活動としてかける電話」など、こちらからかける電話の場合に使われます。ところが最近になって、単に「インバウンド」というだけで「海外から日本を訪問する外国人観光客」の意味として使われることが増えてきました。
「インバウンドの動向」「インバウンド向けのサービス」という場合、「外国人観光客の動向」、「外国人観光客向けのサービス」という意味で使われます。翻訳の場合、そのお客様の分野に合わせて言葉選びをしていきますが、それを読む人が必ずしもその業界の用語に詳しいとは限らないため、「インバウンド」をそのまま使うとしても、初出のところで「インバウンド(訪日外国人観光客)」のように併記し、以降は併記なしで使うようにしています。これも時代と共に移り変わり、表記方法も変わっていくと思いますが、カタカナ表記は「抑えめ」にしています。逆に日英翻訳で「インバウンド」と出てきた場合は、inbound touristsのように補う必要が出てきます。広告的な意味も込めてカタカナ言葉が多用されるということがよくありますが、翻訳の場合は抑えめに使い、日英の場合は意味のずれがないように適宜補うという方法にしています。
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