契約書翻訳、法律文書翻訳担当の岡田です。
今回は「権原(けんげん)」という言葉についてご説明します。英文契約書の英日翻訳をする際、「法律用語の定訳」というものをどこまで使うかということが問題になることがあります。たとえば以下の文章を見てみましょう。
原稿:
The Licensor owns all right, title and interest in and to the Software.
翻訳:
ソフトウェアの権利、権原および利益はすべて、ライセンサーに帰属する。
この英文での「 title 」は、法律用語の定訳としては「権原」ですが、法律用語には特に詳しくない一般のお客様が見た場合、「権原」とは何だろうという疑問が出てきます。
「権原」とは、売買や相続など、権利を基礎づける法的行為やできごとの他、それによって取得した「権利そのもの」を意味します。言葉は似ていますが、「警察の権限」や「代理人の権限」など、法律や契約によって、人や組織に認められる能力である「権限」とは異なります。
契約書やその他の法律文書で見られる法律用語について、他の簡単な言葉に置き換えられることもありますが、「権原」のように置き換えが難しいものがあります。そのような一般にはなじみのない言葉については訳注を付けたり、ご質問にお答えするようにしています。
また「 title 」という単語は、「本や映画のタイトル」、「タイトルを懸けて戦う」、「タイトルマッチ」など、「タイトル」としてそのまま日本語になっていますが、契約書では、「危険負担および所有権の移転」や「署名欄」の項目で、以下のように「所有権」や「役職」という意味で用いられることがよくあります。同じ単語でも、使われている場所によって、適宜訳語を変えながら訳していきます。
「危険負担および所有権の移転」
原稿: Risk of loss and title to the Products shall pass from the Seller to the Purchaser upon delivery of the Products to the carrier at the Seller's plant.
翻訳: 本製品の危険負担および所有権は、本製品が売主の工場で運送業者に引き渡された時点で、売主から買主に移転する。
「署名欄」
原稿: Title : CEO and President
翻訳:役職: CEO 兼社長
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