翻訳家によるコラム「秘密保持( Confidentiality ) 」

高橋翻訳事務所

法律・契約書コラム

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2009/09/29
秘密保持( Confidentiality )

契約書翻訳、法律文書翻訳担当の岡田です。

今回は【秘密保持( Confidentiality )】についてご説明します。

Each party shall maintain in confidence all information which is disclosed by one party to the other in connection with this Agreement and which is designated confidential at the time of disclosure. The obligations under this Article shall not apply to :

(a) information which is at the time of disclosure already in the public domain or becomes available to the public through no breach by the receiving party of this Agreement ;
(b) information which is received by the receiving party from a third party free to lawfully disclose such information to the receiving party ;
(c) information which was in the receiving party's lawful possession prior to receipt from the disclosing party ;
(d) information which is independently developed by the receiving party without using the information disclosed by the disclosing party ;
(e) information which is approved for release by written agreement of the disclosing party ; or
(f) information which is required to be disclosed by order from a court, by requirement for disclosure from the similar authorities or otherwise under the laws.

The obligation under this Article shall continue for five (5) years after the expiry or termination of this Agreement.

各当事者は、本契約に関連して一方の当事者から相手方当事者に開示された情報であって、開示の時点で秘密として指定されたすべての情報を秘密とする。本条に基づく義務は以下の情報には適用されない。

( a )開示の時点ですでに公知である情報または受領当事者による本契約の違反によらないで一般に入手が可能になった情報、
( b )受領当事者に対して当該情報を適法に開示することができる第三者から受領当事者が受領した情報、
( c )開示当事者から受領する前に、受領当事者が適法に保有していた情報、
( d )開示当事者により開示された情報を用いることなく、受領当事者が独自に開発した情報、
( e )開示当事者の書面による同意により、発表を承認された情報、
( f )裁判所の命令により、同様の当局による開示要求により、またはその他法律に基づき開示を求められる情報。

本条に基づく義務は、本契約の満了または終了から 5 年間存続する。


契約の締結後に当事者間で契約に関連する情報のやり取りをするわけですが、その重要性を考慮して情報を秘密にすることを定めた条項です。たとえば、 発注者が受注者に製造を委託する製造委託契約では、発注者が受注者に対して製品の製造に必要な秘密情報をすべて伝えなければなりません。また受注者である製造業者も製造のノウハウなどの秘密情報を発注者に伝えることになります。こうして相手方当事者に伝えた秘密情報がライバル会社にもれた場合、大きな損失を被る恐れがあります。そこで、お互いに「秘密」として指定した情報は開示しないことを約束するわけです。しかし「秘密」として指定された情報であっても、受領側の当事者がすでに知っていた情報であって、他の会社との間でやり取りしていた情報を秘密にするわけにはいかないので上記のように例外を設けるわけです。また契約が終了したとたんに秘密情報を開示されては困るので守秘義務が契約後も存続することを念のために定めておきます。例文には記載しませんでしたが、当事者である会社間で約束をしても、情報が漏れる恐れがあるので、秘密情報の開示を、当事者の役員や従業員やコンサルタントであって、秘密情報を知る必要がある者に制限して、これらの者と守秘義務契約を結ぶことを義務付けたり、秘密情報の使用の範囲を制限したりします。ちなみに「公知( public domain )」とは、読んで字のごとく「 世間一般に広く知られている」という意味です。一般に用いられることはあまりないと思いますが、特許や秘密保持に関連する堅い文書でよく用いられます。


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