生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。
医療機関から出るゴミは廃棄物処理法によって規制されていましたが、この法律には一般廃棄物と産業廃棄物の区分しかなく、原則的には医療機関が自分で処分することになっていました。とはいうものの、大きな医療機関では量的に自己処理は困難であるため、実際には自治体によるゴミ収集によって処理されていました。
医療機関からは注射の針、血液のついたガーゼや脱脂綿(absorbent cotton)など、感染の恐れのあるゴミが出ます。ゴミ収集中に、自治体の清掃部門の職員が誤って針を刺す事故が各地で発生し、B型肝炎(hepatitis B)、C型肝炎、さらにはエイズなどの感染の恐れも指摘され始めました。そこで1988年、厚生省(現厚生労働省)は「医療廃棄物処理検討会」を設けて対策に乗り出し、翌年「医療廃棄物処理ガイドライン」をまとめました。このガイドラインでは、医療機関から出るゴミを「医療廃棄物」とし、このうち感染の恐れのあるゴミを「感染性廃棄物」としてその廃棄の方法を定めています。そして1991年に廃棄物処理法が改正され、医療機関から出る血液の付着した注射針(injection needle)、ガーゼなど感染の恐れのあるゴミは「特別管理廃棄物」に指定されました。この法律の特徴は、マニフェスト制の導入で特別管理廃棄物がその種類、量、性状、取り扱い方法などを告知し、処理業者から適正に処理されたことを証明することにあり、これは感染性のゴミを出した医療機関が、ゴミが最終処分されるまでの責任を負うことを意味しています。こうして感染性ゴミの処理方法は確立しましたが、廃棄物処理業者の数が少なく、設備も十分でないことが心配されています。 |