翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」

高橋翻訳事務所

分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2011/12/06
脳型コンピュータ

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

バイオコンピュータ(biocomputer)は、バイオチップ(biochip)を高度に集積していくことで、いわばハードウェア(hardware)そのものから新しいコンピュータを作ろうとする試みです。

たとえば、1万個のバイオチップをコンピュータの中に入れておき、バイオチップ同士が自然と結合するような能力を与えます。次に何か課題を与えると、バイオチップが互いにネットワークを形成し、最適な答えを導きだすようにプログラムを設計します。そのため、ある程度のネットワークが形成された時点で、知恵(intelligence)や知識の結びつきによる新しい概念を創造されるため、「教育(teaching)」が必要となります。

この教育を繰り返し行えば、やがてバイオチップ同士がくっついたり、離れたりして互いにコミュニケーションを取り合い、新しいネットワークをどんどん構築する、すなわち自ら学習しながら成長するバイオコンピュータを誕生させることができます。

それに対して、脳の神経回路網が行っている情報処理(data processiong)をモデルとするソフトウェアを考えることによって、人間と似たパターン認識や学習を行わせようとするアプローチ方法があります。これがニューロコンピュータ(neurocomputer)といわれるものです。

人は脳の神経回路網でさまざまな情報処理をしています。どんな情報処理機構によって行われているかはまだ明らかにされていませんが、いくつかの推論が出されています。例えば、バックプロパゲーション(誤差逆伝播法:backpropagation)モデルやホップフィールドのモデルなどです。ニューロコンピュータはそうしたモデルを使って、神経細胞を模倣したユニットを多数配置して学習機能をもたせようとするものです。

現在、ヤリイカ(spear squid)や線虫(nematode)など、比較的神経系が取り扱いやすい生物を使って、神経がどうスパークし、回路網がどのように反応するかを調べる研究が行われています。今後、ニューロンの研究がどんどん進めば、ニューロンのモデルも高次になってきますから、それだけいいソフトウェアのコンピュータができるはずです。また、生物のもつ遺伝子の複製や組み換えといった遺伝のメカニズムをモデルとして問題解決を図る遺伝的アルゴリズムを取り入れたコンピュータの研究も進んでいます。


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