生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。
遺伝子組み換え技術(transgenic technology)は意外なことに、今から40年前の1970年代初頭に確立されたものです。同技術は当時、驚きと期待、そして恐れをもって迎えられたそうです。ある遺伝子を、本来とは別の種類の生き物の中で働かせるのですから、一般市民の中には「危ない生物が生まれるのでは?」と心配した人もいたに違いありません。一方、研究者(researcher)はこの技術を前に、研究の発展に胸を躍らせていたと思います。
遺伝子組み換え技術が生まれてまもなく、起こりうる危険性を危惧した研究者が世界中に呼びかけ、このような実験を継続すべきか、あるいは全面的に中止すべきかを議論する場を設けたことがあります。
1975年、カリフォルニア(California)のアシロマ会議(Asilomar Conference)センター。日本を含む十数カ国から科学者、法律家、報道関係者150名が集まり、賛否両論の激しい議論が四日間にわたって続きました。最終的に遺伝子組み換え実験は継続されることになりましたが、万一の場合に備え、遺伝子を組み換えた生き物を実験室の外へ出さないような実験場の対策が決まりました。
この会議は科学者が技術の危険性を認め、自主的に対策を始めたという意味で、歴史に残る会議となりました。
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