翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」

高橋翻訳事務所

分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2011/11/01
アレルギーについて

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

スギ花粉症(cedar pollinosis)の素因があっても、北海道の大部分や沖縄では花粉飛散が少ないので発症しません。アレルギー(allergic predisposition)に罹る人の体質は遺伝するか?という疑問に多くの研究者が挑戦してきました。1923年、コカ氏がアレルギー体質は遺伝すると報告し、これを「アトピー(atopy)」と呼ぶことを提唱しました。その後の研究でもアレルゲンに過敏な「アレルギー体質」「アトピー体質」は確かにあるという結論です。アレルギーに悩む人の多い家族とまったくアレルギーのない家族があること、一卵性双生児(identical twins)や三代以上の大家系の家族や核家族(nuclear family)の解析でも、アレルギーの発症に一定の遺伝様式が証明されています。しかし、この遺伝様式は複雑で、IgE抗体を作りやすい素因、マスト細胞表面のIgE受容体の発現しやすい素因、アレルギー反応に関係する物質(サイトカイン)産生やヒスタミンなど化学物質受容体の発現などを支配する多種の遺伝子がアレルギー素因を決めているようです。

また、アレルギーは遺伝要因と環境要因がそろった時に発症します。環境要因の第一はアレルゲン曝露、つまりアレルゲン(allergen)に触れることで、いくらアレルギー素因があってもアレルゲンのないところでは発症しません。その他、環境汚染やストレス、食物なども二次的に花粉症発症の条件となります。21世紀の重大な社会的課題である環境問題も、アレルギー人口の増加要因として考えていかなければなりません。職業による花粉アレルギーも注目されています。例えば、ビニールハウス内でイチゴの花粉を外界より濃い濃度で吸い込むとイチゴアレルギーになることが報告されています。生活のかかった問題です。環境とアレルギーの問題は行政が一緒に取り組まなければならないことは当然と言えるでしょう。


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