翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」

高橋翻訳事務所

分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2011/09/26
臓器移植用クローンに対する誤解

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

将来、臓器移植(organ transplant)を必要とするときに自分の臓器を育てるという案がありますが、これに関しては大きな誤解が潜んでいることが多いです。骨の細胞(cell)から心臓を作るとか、胎児幹細胞(embryonic stem cell)からいろんな組織を作り出せるかもしれないということが話題になり、現在ではクローン(clone)技術を使って生物の組織を培養する実験が行われています。しかし、これはクローン人間という固体を産んで育てて殺して移植するわけではありません。ここにおいては固体の発生は全く無いのです。

そもそも自分の子供でもその臓器を自由に利用することはできません。したがって臓器移植人間を作るということは、現在の法律ですでに殺人罪や傷害罪になる可能性があり、そういう移植が許されるという前提そのものが成り立ちません。

細胞を増殖させる方法にもクローンと呼ばれる方法がありますが、その方法では絶対に人間の固体が生まれることはありません。

科学の全分野について言えることですが、一般の人々が理解できる説明も、発見や発明と同じくらい重要だということです。


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