翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」

高橋翻訳事務所

分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2011/09/20
遺伝子の転写

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

細胞内では、mRNAのほかにもいろいろなRNAがあって、遺伝子(gene)の情報からの翻訳(translation)過程で働いています。すべてのRNAはDNAを鋳型にして合成されていて、真核生物内の合成は核内で行われています。DNAの合成にはDNA合成酵素(DNA polymerase)が働きますが、RNAの合成ではRNA合成酵素(RNA polymerase)が働きます。

mRNAは、DNAを持っている遺伝情報を転写して、翻訳系へ運ぶ役割をします。真核生物ではRNAポリメラーゼ?がmRNAの合成を担当します。

遺伝情報を運ぶmRNAは、当然、働いている遺伝子の数だけの種類があるはずです。だからどんな細胞でも、数千種類ものmRNAを含んでいると考えられます。しかしながら、すべてのmRNAを合わせても、細胞内の量としてはRNA全体の1%程度しかありません。つまり、一種類のmRNAの量は大変少ないことになります。

rRNA(ribosome RNA)は、タンパク質(protein)と共にリボソームという大きな複合体を形成して、翻訳会社の仕事場として働きます。翻訳会社の業務は、リボソームという顆粒の上で行われるわけです。真核生物ではRNAポリメラーゼ?がrRNAの合成を担当します。

rRNAは、原核生物では3種類、真核生物では4種類あります。細胞内の量としては、RNA全体のおよそ95%がrRNAです。

tRNA(transfer RNA)は、アミノ酸と結合して、アミノ酸を翻訳会社であるリボソームへ運びます。そして、mRNAの遺伝暗号とアミノ酸との翻訳で重要な役割を果たします。真核生物ではRNAポリメラーゼ?がtRNAの合成を担当します。

tRNAは100以下のヌクレオチドからなる小さなRNAで、RNA全体の5%程度を占めています。

真核生物ではこのほかにも、snRNAやsnoRNAなど、いくつかの小さなRNAが知られています。タンパク質の一次構造に翻訳される情報を持つものはmRNAだけで、mRNA以外のRNAはいずれも非翻訳RNA(non-coding RNA)と総称します。

細胞内での役割分担は大変よくできていて、不思議な気がします。


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