生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。
システインというアミノ酸は硫黄原子を含んでいますが、硫黄の代わりにセレンという金属原子を持ったセレノシステインというアミノ酸があります。セレノシステインを含んだタンパク質は、活性酸素などから体を守る大切な働きを持っています。
通常、20種類のアミノ酸以外のアミノ酸を含む、変わったタンパク質が体内にある場合、そのアミノ酸は翻訳後で修飾が起きている場合が多い。たとえば、コラーゲンに取り込まれたプロリンというアミノ酸は、後で水酸化されて、ヒドロキシプロリンという普通にはないアミノ酸に変化する。ヒドロキシプロリンが翻訳に使われているわけではありません。
ところが、セレノシステインの場合は、なんと、セレノシステインを運ぶ特殊なtRNAが存在していて、終止暗号(UGA)をセレノシステインに読み取って翻訳するのです。だから、UGAは21番目のアミノ酸の暗号といえます。もちろん、終止暗号が勝手に翻訳されては困るので、こういう反応が起こる場合は、その近くにmRNAの分子内二本鎖形成によるヘアピン構造などができて、それに結合する特殊なタンパク質が働くことになります。そういう特殊な事情がなければ、UGAは終止暗号に留まります。
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