生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。
タンパク質の翻訳は、「翻訳の開始」、「鎖の延長」、「翻訳の終了」というプロセスを経て完了します。それぞれの反応には、開始因子、延長因子、終止因子と称される、たくさんのタンパク質の働きが必要です。
- 翻訳の開始反応
翻訳の開始の際は、開始因子(IF:initiation factor)というタンパク質の働きによって、まず、リボソーム、mRNA、Met-tRNAからなる開始複合体ができます。この開始複合体ができることで、タンパク質合成が始まります。
開始因子は30種類以上ものタンパク質のグループです。真核生物の場合、開始因子は真核生物 (eukaryote)の頭文字「e」をつけてeiFと書き、種類は後ろに数字をつけて表わします。この開始因子の働きによって、遺伝子の情報を持った mRNAと、翻訳の最初のアミノ酸を提供するMet-tRNA、翻訳反応を進行させる場であるリボソームの3者が会合した開始複合体ができます。
- 翻訳の延長反応
翻訳の開始反応後、実際の翻訳、すなわちペプチドの延長が始まります。ペプチド鎖の延長は相当に 複雑な反応です。単純に言えば、ペプチド鎖とtRNAの結合を切断し、ペプチド鎖のカルボキシル基と次につながるアミノ酸のアミノ基をつなげて、ペプチド 鎖を作る。延長の際は、延長因子(EF:elongation factor)というタンパク質が働きます。真核生物の場合、延長因子はeEFと表わします。延長の過程では、アミノ酸が1つ加わるごとに、2分子の GTPが加水分解されることも特徴です。生体内でエネルギーを必要とする多くの反応ではATPが使われますが、ここではGTPです。
- 翻訳の終止反応
mRNAの暗号が終止コドンであったとき、翻訳の終止反応が起きます。終止コドンのところへは、 アミノアシルtRNAの代わりに終止因子(RF:releasing factor)というタンパク質がやってきて入り込みます。真核生物の場合、終止因子はeRFと表わします。
この場合も、eRF全体の形や表面電荷の分布がアミノアシルtRNAとよく似ていて、分子擬態し て入り込むのだそうです。mRNAの暗号が終止暗号のときだけ、こうして入り込めるというのも、なかなか凝った仕組みだと思います。終止コドンと終止因子 が結合すると、ペプチドとtRNAの間が加水分解されてタンパク質が遊離し、tRNAもmRNAも外れます。
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