翻訳家によるコラム「分子生物学・バイオ技術・環境コラム」

高橋翻訳事務所

分子生物学・バイオ技術・環境コラム

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2013/03/19
研究対象を絞り込む典型的な例は「量子物理学」

生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。

生命のことがわかりたければ、量子物理学(quantum physics)が歩んできた道と同じように、それに適した材料を選び、集中的に研究して、そこから基本原則(fundamental principles)を導き出すことが必要です。そのような生物界の代表を「モデル生物(model organism)」といいます。ただ物理現象と違い、生命現象は複雑で、またその多様性が重要です。言い換えると、生命の研究では基本原則と並んで例外が同じくらい重要です。

細胞の表層、つまり細胞膜の外側には「細胞壁」と呼ばれる網が覆っています。細胞の内側と外側では大きな浸透圧がありますが、細胞膜が圧に耐えて破れないのは、細胞壁が保護しているからです。細胞壁を取り去ったり、作れなくしたりすると、細胞はパンクして死んでしまいます。抗生物質のなかの抗生物質といえる、今なお世界中で広く使われているペニシリンは、細胞壁の合成を止めて細菌をパンクさせます。われわれ高等動物の細胞には細胞壁がありません。代わりに、細胞膜の内側から細胞骨格という骨組みを張ることで浸透圧に耐えます。そのため、ペニシリンは侵入してくる病原菌は殺しますが、私達にはほとんど害がありません。

この原理を知る上では病原菌を使う必要がありません。病原性のない安全な大腸菌を使って突き止めることができるからです。


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