生物学翻訳、学術論文翻訳、環境翻訳担当の平井です。
タンパク質は他の分子と相互作用することによって機能を発現します。従って、相互作用を調べることは機能を理解するために大切で、相互作用を調べるためのいろいろな方法が開発されてきました。転写活性化因子を利用した酵母ツーハイブリッド系は、細胞内の可能な相互作用を網羅的に調べる方法で有名ですが、今回は相互作用を定量的に測る物理的方法を紹介したいと思います。
1.表面プラズモン共鳴法(surface plasmon resonance):この方法は、基板表面に結合しているタンパク質Aに別のタンパク質Bが結合する際に屈折率が変化することを利用します。その際に金薄膜の裏側で起こる全反射光が、特定の角度でプラズモン共鳴を起こして強度が減少するのでその角度の変化をモニターします。この方法によって、タンパク質Aへのタンパク質Bの結合をリアルタイムで測定し、結合の速度定数を決定することができます。
2.等温滴定型微小カロリメトリー:この方法では、反応のエンタルピー変化を直接測定することができます。たとえば、タンパク質Aの溶液の入った断熱恒温槽中の試料セルに、外からタンパク質Bまたは低分子のリガンドを少量ずつ一定温度で注入し、そのときに出入りする熱量が記録されます。これにより、データからエンタルピー変化と結合定数、モル比が決定できます。
3.超遠心分析:超遠心分析は相互作用の解析にも用いられます。沈降平衡法では溶質のある濃度範囲で重量平均分子量が求められるので、このデータから平均定数を決定することができます。
このほか、細胞内「翻訳会社」で合成されたタンパク質相互作用を調べる方法として、蛍光相互相関法などがあります。研究員の方々は目的に応じてこれらの如何にも難しい方法を使い分けているのですね。感心します。 |