「信濃の国 原始感覚美術祭2019 水のうぶすな」で演奏してきました。

高橋翻訳事務所

音楽・医学コラム

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2019/09/30
「信濃の国 原始感覚美術祭2019 水のうぶすな」で演奏してきました。

音楽翻訳担当の池上です。

今回は、音楽というより美術寄りのお話をしようと思います。 この8月24日〜9月1日に長野県大町市で開催された「信濃の国 原始感覚美術祭2019 水のうぶすな」(SHINANO Primitive Sense Art Festival 2019 The birthplace of water)(http://primitive-sense-art.nishimarukan.com/)に音楽の演奏で参加してきました。

これは美術家の杉原信幸氏(Nobuyuki Sugihara)(http://sugiharanobuyuki.net/)をアートディレクター(Art Director)に2010年から毎年開催されている美術祭で、大町市にある木崎湖(Lake Kizaki)の周辺などで展示やパフォーマンスが行われます。私はギターやバンドネオンなどのミュージシャンとともに、8月31日には木崎湖畔で、9月1日にはメイン会場となった信濃公堂で演奏しました。展示の一貫ですので「パフォーマンス・アート(performance art)」と言う位置づけになるかもしれません。

この美術祭は「原始感覚」という名称にもあらわれているように、どちらかというとプリミティブ(primitive)な表現を中心に構成されているものでした。アートディレクターの杉原氏のインタビュー(https://naganoart-plus.net/?p=7122)を読んでも、やはりシャーマニズム(Shamanism)や縄文文化などへの関心が高いことが見受けられ、杉原氏のこのような関心と、山に囲まれた自然豊かな大町市の環境が、この美術祭の原点になっているように思われました。

原始感覚美術祭は、公的な助成金(grant)などを受けずに手弁当と言っていいスタイルで行われているとのこと。出展されている作品が上述のとおりプリミティブな表現のものが多いこともあり、手づくり感覚たっぷりの美術祭でした。非常に個性的な分、見る人にとっては好き嫌いがはっきり分かれる部分があるかもしれません。実際、最終日の前夜に行われたディスカッションでは、スタッフの中から「今年は今までより内向きになってしまったのではないか」という声も上がっていました。公募作品も受け入れて地域密着を目指す一方で、美術祭としてのこだわりや統一感を維持していくことの兼ね合いの難しさを、そのような議論を聞きながら実感しました。

この地域では、隣接する松代市でも「まつしろ現代美術フェスティバル」(Matsushiro Contemporary Art Festival)(http://mcaf.nishimarukan.com/)が毎年開催されるなど、美術祭が盛んな地域になっているようです。こちらは公的助成も受けて、原始感覚美術祭よりも大きい規模での開催となっているようですね。話を聞いたところ、両方に出品するアーティストなどもいて、ゆるくではあるけど連携しているようです。

最近は、地域おこしなどの目的もあってか、瀬戸内国際芸術祭(Setouchi Triennale)をはじめとして、地方での美術祭が多く行われるようになっています。今は少々増えすぎの感もなきにしもあらずですが、切磋琢磨してレベルを上げていってもらえたら何よりです。

音楽のほうは、美術のような公的助成などを得てのフェスティバルはまだまだ少ないですね。やはり数日間にわたって音を出し続けられる施設や環境が必要になることなどがハードルになっているようです。しかし、今後の日本の文化のためにも、音楽のほうでもこのようなフェスティバルが増えてくれることを願ってやみません。


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