医学翻訳、学術論文翻訳、音楽翻訳担当の池上です。
CDが売れないと言われるようになって久しいですね。みなさんは最近CDを買っていらっしゃいますか? 私見ですが、CDが売れなくなってきている原因には、大きく分けて二つあると考えられます。一つは、娯楽として音楽が求められなくなってきていること。これは特に若い人に顕著です。特に最近はスマートフォンの普及によって、多くの人の生活の中でスマートフォンが大きな存在となってきています。スマホでゲームをしたりメールをやり取りしたり、さまざまなアプリを使ったりすることで、時間的に、そして経済的な面でスマートフォンが大きな割合を占めるようになり、相対的にCDを買ったりすることが減っている、というわけです。
そしてもう一つは、音楽メディア、特にPCオーディオを中心としたメディアの多様化です。以前コラムの中でMP-3の問題に触れたことがありますが、インターネットで配信されている音楽データはMP-3だけではありません。最近ではCD並み、またはCDよりも高音質のデータの配信が増えているのです。CDは規格が決められた時点で収録される周波数の帯域やビット数が決められています。これから外れる規格のデータは再生できません。CDが生まれて以来、さまざまな技術が開発されてCDの音も向上はしてきました。しかし、どんなにがんばっても周波数帯域とビット数を変えることはできません。しかしパソコンを通したデータ再生の場合、ソフトがCD以上のスペックの音源に対応できていれば、CD以上の高音質で音楽を楽しむことができるのです。これではCDは太刀打ちできません。
そしてもう一つ大きいのが「アナログの復権」です。CDの出現以降もアナログにこだわる人は確実に存在していました。しかしアナログ盤の製造はほとんどなくなる状態が続いていました。
それが変わったのは21世紀に入ってからではないかと思います。アナログ盤の人気がどんどん高まっているのです。中古盤ショップに行っても、アナログ盤のコーナーが広くなったり、場合によってはアナログ専門店もあらわれています。それだけアナログ盤の人気が高まっているのだと思います。
かく言う私もアナログ盤を愛聴している一人です。前述のCDとは違い、アナログでは周波数のカットということは行われません(アナログ録音特有の劣化はありますが)。そのカットされずに残った周波数の部分が「味」として感じられるのだ、という人もいます。実際、おなじ作品をLPとCDで聞き比べても、やはりアナログ盤のほうが耳に心地いいんですね。最近のアナログ盤の復権の理由の中に、この聞いたときの心地よさがあるのだと思います。
つい最近、仕事で一ヶ月ほどアメリカに行っていた友人がいるのですが、彼が言うには、現在のアメリカではアナログ盤が完全に復権する一方、音楽のデータ配信はMP-3ではなくCDより高音質のデータが送れる「FLAC」(フラック)という規格が主流になりつつあるとのこと。CDはかなり旗色が悪いようです。またAmazonを見ても、昔のロックやポップスの名盤の再LP化がかなり多くなっており、彼の言葉を裏づける状況が見てとれます。
アナログ盤はCDに比べるといろいろと手間はかかります。しかし手間をかけるだけの魅力がある、と私は思っています。みなさんもアナログ盤をもう一度聞いてみませんか? |