契約書翻訳、経済翻訳、政治翻訳、スポーツ翻訳担当の佐々木です。
今回は、ネット上の名誉棄損罪( defamation of character )についてです。
最高裁( supreme court )は先日、自分のホームページ上で外食店の経営会社を「カルト集団」などと中傷したとして名誉棄損罪に問われた男性の上告( appeal )を棄却( dismissal )する決定をし、罰金 30 万円が確定となりました。東京地裁( district court )は、ネット上では反論が容易であり、個人が発信した情報の信頼性は一般的に低いと受け止められているとして、無罪( innocence )にしました。これに対し、東京高裁( high court )はネット上の全情報を把握して反論することは不可能である点や、個人がネット上で発信した情報は信頼性が低いとは限らないとし、逆転有罪( reversal of innocence )の判決を下しました。最高裁も高裁判決を支持し、不特定多数の利用者が瞬時に閲覧可能なため、被害が深刻になりうるという点など、ネット特有の事情も指摘し、間違えたことに相当な理由はなかったと結論づけました。
警察庁のまとめでは、ネットによる名誉棄損や中傷に関する相談は年々増加し、 2009 年には 1 万件を超えました。 8 年前にプロバイダー責任法( Internet Provider Responsibility Law )が施行され、被害者による発信者情報の開示請求( disclosure request )などが可能となりました。しかし、請求に応じるかはプロバイダーに委ねられているため、実効性に乏しいとの指摘もあります。
ネットの利用者は国民の 75% に上り、誰でも手軽に情報を発信することができる時代になりました。しかし、情報の発信には責任が伴い、誹謗中傷は決して許されることではありません。ネット利用者は、自身が発信する情報の影響力と責任を改めて認識するとともに、家庭や学校においてもネットの利用法を指導していくことが必要とされています。 |