契約書翻訳、経済翻訳、政治翻訳、スポーツ翻訳担当の佐々木です。
今回のテーマは役員報酬( executive pay )の開示( disclosure )についてです。
金融庁( Financial Services Agency )が上場企業に対し、報酬が 1 億円以上の役員の氏名や報酬額を開示するよう義務づけました。 3 月期決算企業の場合、該当する役員名と報酬額を記載した有価証券報告書( securities report )を 6 月中に公表しなければなりません。しかし、プライバシー保護( privacy protection )の点からも課題が多く、日本経団連など経済界も強い反対を示しています。これまでは役員全員の報酬総額を開示するだけでしたが、世界的な金融危機( financial crisis )の際に高額な役員報酬が問題視されたことや欧米ではすでに実施している国が多いことから、金融庁は個別開示に踏み切りました。
欧米の金融機関では、役員が高額の報酬目当てに利益率が高くリスクが大きい投資に走った結果として危機を招きましたが、日本の企業にはこういったことはほぼ皆無です。また、報酬の水準も大きく異なり、アメリカの上場企業の最高経営責任者( CEO : chief executive officer )は平均で 390 万ドル(約 3 億 5,000 万円)ですが、日本の上場企業の役員報酬は平均で 2,500 万円程度となっています。
役員報酬の開示について最も重要な点は、会社の規模や業績に比べて報酬が異常に高く、株主( shareholder/stockholder )の利益を損なっていないかをチェックすることであり、従来の総額開示で十分との意見が大勢を占めています。また、個人の報酬額が開示されることにより、振り込め詐欺などの犯罪や嫌がらせの助長も懸念されています。
実施前に十分な論議がされず、猶予期間も設けられませんでした。個人情報の開示には危険が伴うことを認識し、個別開示の見直しを含めて再検討する必要があるでしょう。 |