高橋翻訳事務所でスポーツ経済分野の翻訳を担当している佐々木と申します。今回は新型コロナウイルス(COVID-19)とスポーツの共存についてです。
新型コロナウイルスの変異ウイルス(mutant)が日本国内でも蔓延するなか、4月5日からは大阪府、兵庫県、宮城県を対象にまん延防止等重点措置が発令されました。大阪府と兵庫県は3月1日に2回目の緊急事態宣言(state of emergency)が解除されてから1カ月あまりでの感染再拡大に政府も危機感を強めていますが、12日からは東京都、京都府、沖縄県に、20日からは神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県にも重点措置が適用され、専門家も変異ウイルスが既存ウイルスに置き換わって第4波が始まった可能性が高いと警鐘を鳴らすなど、状況が改善する兆しは見えてきません。その後も感染者数の増加に歯止めがかからないため、23日には東京都、大阪府、京都府、兵庫県に3回目の緊急事態宣言の発出が決定しました。期間は4月25日から5月11日までですが、効果について疑問視する声もすでに上がっています。
1年以上も続く自粛生活やテレワークへの切り替えなどにより運動不足や体重の増加に悩む人も増えています。運動不足は体力、筋力の低下を引き起こすだけでなく、腰痛や肩こり、疲労の蓄積、精神面への悪影響も指摘されていますが、感染対策を取りながらスポーツを安全に楽しむためのガイドラインがスポーツ庁(Japan Sports Agency)のウェブサイトで紹介されています。体を動かすことで免疫力を高め、ストレスを解消したり体力を維持したりすることができますが、短時間での簡単なストレッチやエクササイズをするだけでも十分な効果があることも実証されていますので、日頃から意識して体を動かすことでコロナ禍の運動不足と上手に付き合っていきましょう。
新型コロナウイルスの影響で昨年はさまざまなスポーツの大会が中止や延期を余儀なくされました。特に長い歴史のある高校野球は春の選抜大会と夏の選手権大会が2つとも中止になるなど(春夏連続の中止は史上初)、球児にとっては辛い1年となりました。しかし、今年は3月19日から選抜高校野球大会が2年ぶりに開催され、4月1日の決勝戦まで大きな混乱もなく終了しました。感染防止のために取られた措置は主に以下のようなものがあります。
・開会式は初日に試合がある6校のみ参加
・観客の上限を1万人とし、アルプス席は学校関係者限定で1,000人まで
・入場券は前売り券のみ
・大会前に選手とチーム関係者全員に対してPCR検査を実施し、1回戦で勝利した学校は試合翌日に再度PCR検査を受ける。
・試合中は出場している選手とベースコーチ以外はマスク着用
・ブラスバンドの演奏や大声での応援を禁止し、事前に録音した音源を場内スピーカーで流す。
・チアリーディングはマスクを着用し、発声は禁止
・閉会式でのメダル授与は各チームの代表者1名のみ
このように万全な対策を取ったうえで成功例を積み重ねていき、大規模なイベントの運営方法を確立することが、新型コロナウイルスと共存するにあたって重要となってきます。今回の選抜大会での反省点、改善すべき点なども含めて他のスポーツ団体と経験を共有しながら今後に生かしてほしいと思います。
7月に開催が予定されている東京オリンピック・パラリンピック(Tokyo 2020 Olympic and Paralympic Games)も3月25日に福島県から聖火リレー(Olympic-torch relay)が始まりました。聖火リレーでは沿道で声援を送る人が密集したり、感染が拡大した県では公道を走るコースが中止になったりするなど、聖火リレーの実施、続行については賛否があります。各国で新型コロナウイルスの収束が見通せないなか、大会組織委員会、東京都、政府、国際オリンピック委員会(International Olympic Committee:IOC)、国際パラリンピック委員会(International Paralympic Committee:IPC)の代表者による協議により、海外からの観客の受け入れを断念することが正式に決まりました。すでに販売された観戦チケットはすべて払い戻しになる予定ですが、海外からのスポンサー関連の招待客やボランティアの受け入れ、各会場の観客上限数については未定です。4月に入ってもヨーロッパやアジアの各国でロックダウン(lockdown)が実施され、ブラジルやインドでは1日の感染者が10万人を超えるなどオリンピック・パラリンピックの開催は依然として不透明なままとなっています。アメリカの新聞紙やイギリスの医学誌でもオリンピックの開催を危険視する記事が掲載されていますが、ウイルス対策の切り札とされているワクチンの接種がどこまで進むのか、開催国(host country)である日本の感染をどこまで抑制できるのか、選手団の受入、検査、医療体制をどこまで整備することができるのか、開催まで100日を切った現在でも課題は山積みとなっています。
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