高橋翻訳事務所でスポーツ分野の翻訳を担当している佐々木と申します。今回は新型コロナウイルス(COVID-19)がスポーツ界へ与えている影響について取り上げます(5月末時点)。
3月、4月と新型コロナウイルスの感染が拡大していくなかで、日本国内のスポーツもさまざまな影響を受けてきました。まずはプロ野球ですが、2020年の開幕は当初3月20日を予定していました。しかし、数度の延期を余儀なくされ、4月には交流戦、5月にはオールスターゲームの中止も決まりました。その後、5月25日に緊急事態宣言(declaration of a state of emergency)が全国的に解除されたことを受け、6月19日の開幕が正式に決定しています。試合数は143試合から120試合に縮小され、日本シリーズは11月21日に開幕することも発表されました。6月2日から練習試合を行い、開幕後も当面は無観客となりますが、状況によって7月10日から観客を動員することが検討されています。遠征などの移動に伴う感染リスクも指摘されていますが、首都圏で集中して2〜3週間試合を行い、その後は別の地域で集中的に試合を行うなどの対策も議論されています。また、試合時間も東日本大震災(Great East Japan Earthquake)の際に導入された3時間半ルールや9回で試合を打ち切るという案も出ており、開幕の準備が急ピッチで進められています。
2月に開幕して第1節が行われたJリーグも第2節以降は延期が続いていますが、5月29日に開かれた臨時の実行委員会でリーグ戦の再開日が6月27日に決まりました(J2、J3が6月27日、J1は7月4日)。今シーズンは原則として週に2試合行い、12月に最終節を迎えるスケジュールになっています。当面は無観客で、7月10日以降に状況を見極めながら観客の動員が始まる予定です。また、長距離移動による感染のリスクを抑えるために、7月は東西2ブロックに分けて試合を行います。公式戦の再開にあたり、J1からJ3の全56クラブに所属する選手、スタッフに対してPCR検査を行うことも具体的に検討されています。すでにリーグ戦が再開されている韓国やドイツでも全選手にPCR検査が実施されており、Jリーグも海外での事例を参考に導入される見通しです。その他、今シーズンはJ1、J2の降格なし、J1参入プレーオフの中止なども発表されました。緊急事態宣言が解除された後、すぐに全体練習を始めたクラブや個人練習に限定していたクラブなど、チームごとに調整状況が異なっていることもあり、再開までの1カ月が重要になってきます。また、週2試合という過密日程ということで交代枠も増員される見込みですが、特に夏場のコンディション維持には例年以上に注意する必要が出てくるでしょう。
ゴルフ界も同様にコロナウイルスの影響を受けており、男子の開幕戦は1月にシンガポールオープンが行われましたが、4月から6月までの試合はいずれも中止、延期となっています。7月以降の大会についても、2日から開催される予定だった日本プロゴルフ選手権の日程変更が発表されるなど、再開の見通しは立っていません。また、女子も3月上旬の開幕戦が中止となり、その後も7月までの試合が相次いで中止、延期となっています。一方、感染の拡大が続いているアメリカですが、男子ツアー(PGA Tour)は6月11日からテキサス州で行われるチャールズ・シュワブチャレンジ(Charles Schwab Challenge)で再開されることが発表されました。数試合は無観客で行われ、選手や関係者への検査体制などの対策も取られる予定です。
大相撲は、大阪での3月場所を無観客で開催しました。部屋と会場の移動は公共交通機関ではなく、タクシーや自家用車などを利用したり1日2回の検温を実施したりし、場所中にコロナウイルスの感染者が出た場合は場所を打ち切るなどの対策を行いました。22日の千秋楽までに数名の力士が発熱などを発症しましたが、いずれも陰性だったため、無事に場所を終えることができました。しかし、両国国技館で行われる5月場所は中止となり、7月の名古屋場所も東京で無観客開催、10月の秋巡業の中止が発表されました。さらに、4月にコロナウイルスの感染が発表された力士が5月に他界したことで角界に大きな衝撃が走りました。これ以上の犠牲者を出さないためにも、相撲部屋内での感染防止を含めたコロナウイルス対策の見直しが求められています。
緊急事態宣言が解除されたことで、スポーツ界も再開に向けた動きが始まっています。選手や関係者の安全を守るために細心の注意を払わなければならない厳しい状況は続きますが、各競技団体が団結して効果的なアイデアを共有したり、他国の状況を参考にしながら感染防止のガイドラインを作成したりすることで、感染者を出さずに試合を行うことができるモデルケースを確立してもらいたいというのがスポーツファンの願いです。
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