高橋翻訳事務所で契約書・法律文書の翻訳を担当している佐々木と申します。今回も引き続き航空機リース(aircraft lease)についてです。
前回のコラムでは航空機リースの概要についてお話ししました。航空機は1機あたり数百億円に達するものまであるため、航空会社が全機を自社で購入し、管理することは現実的ではありません。そこで、航空会社が航空機を調達する手段として活用しているのが航空機リースで、リース市場はここ数十年で急激な成長を見せてきました。航空会社がリースを積極的に活用する背景について見ていく前に、航空機の開発から納入までのプロセスについてご説明します。
航空機メーカーが新型機を開発する際には、まず航空会社などからの要望や市場予測を基にして開発計画を立て、各社に提案します。そこで、航空会社や航空機リース会社から十分な数の発注を受け、受注体制を整えた後で、計画が正式にスタートします。このような発注を行う会社はローンチカスタマー(launch customer)と呼ばれ、その後の航空機の設計などに大きく関与します。新型機の開発には1兆円以上の費用がかかるため、メーカーは事前に一定数の発注を確保できなければ、計画は破棄となってしまいます。ローンチカスタマー1社が発注を行う場合もありますが、1機あたりの価格が高額になる超大型機は複数社がローンチカスタマーになるケースもあります。例えば、エアバスA380(Airbus A380)の開発計画ではシンガポール航空(Singapore Airlines)とエミレーツ航空(Emirates)の2社がローンチカスタマーでした。
新型機の開発が決まると、部品の製造が開始します。部品の製造は協力メーカーで行われ、このような会社は部品サプライヤー(parts supplier)と呼ばれます。航空機の部品数は約300万もあり、部品サプライヤーは世界各国に存在しますが、その中には日本のメーカーも含まれており、翼部分、エンジン部品、装備品など、約40社の日本企業も関わっています。実際にボーイング787(Boeing 787 Dreamliner)の全部品の1/3以上は日本のメーカーが担当しました。部品サプライヤーが製造した各部品は航空機メーカーの工場へ納入されます。例えば、ボーイング社はアメリカのエバレット、エアバス社はフランスのトゥールーズに最終組立ライン(final assembly line)があります。
航空機の組立作業が終わるとさまざまな試験が行われますが、試験以降の工程については次回のコラムで取り上げていきます。
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