契約書翻訳、経済翻訳、政治翻訳、スポーツ翻訳担当の佐々木です。
今回のテーマは福島第1原子力発電所(Fukushima Daiichi Nuclear Power Station)の事故収束宣言についてです。
12月16日に野田首相は記者会見で、「原子炉は冷温停止状態(cold shutdown condition)に達し、事故そのものが収束に至ったと判断できると」述べ、事故収束の工程表「ステップ2」の完了を宣言しました。今後は、避難している住民の帰宅や廃炉に向けた作業が始まります。原子炉が一定の安定状態を保つ冷温停止は年内達成を目標に掲げられていましたが、今回の宣言によって事故後の作業は順調に進んでいることを示しました。
しかし、本当に事故は「収束」したのでしょうか。東京電力(TEPCO: Tokyo Electric Power Company)が11月に公表した1号機の解析結果では、圧力容器の底が抜け、ほぼすべての燃料が容器外へ落ちて格納容器を傷つけていたことが判明しています。また、汚染水(radiation contaminated water)の淡水化装置から汚染水が漏れ、約150リットルが海に流出していたことも発覚しています。東京電力は「影響はほとんどない」としていますが、相変わらず情報の開示は遅く、国民に対する十分な説明はなされていません。そして、3号機、4号機の建屋を覆う工事もまだ済んでおらず、放射性物質の大気への飛散は続いています。その他にも汚染土(radiation contaminated soil)の保管場所をどう確保するのか、広範囲に及ぶ除染(decontamination)は可能なのかなど、課題は山積しています。
特に被災地(affected area)の方々にとっては、安心して自宅に戻り、安心した生活を送ることができるようになるまでは、事故が「収束」したとは言えません。政府は国内外に原発の安全性をアピールすることを急ぎ、一番苦しんでいる人たちの存在を忘れてしまっているのではないでしょうか。 |